上達のするための一つの考え方 

今回は、バレエに限らず体を使って習得していく系統のものには当てはまる、上達への道筋の見つけ方と心の持ちようについて書きたいと思います。あくまで多くの考え方の中の一つですので決めつけるつもりもありません!参考までにご覧いただければ幸いです。

  1. 自分にはまだ知らない領域が当然ある
  2. 知っている側からは当たり前のことのように思える
  3. 他人からは工程のどのあたりにいるかは見えている。本人からは目の前の課題を乗り越えないと次の工程は見えない模索が続く
  4. 自分を観察し、仮説を立てながら検証する

1.自分にはまだ知らない領域が当然ある

習い始めた時は自分が理解習得していない事が多いのは自認できていると思います。ある程度習熟してくると今自分が理解していることだけで処理しようとし始める傾向にあるように思います。実際ある程度は可能なのですが、やはり微妙に間違っていたりします。それに何か足りないのは自分の心の奥でも感じてしまうと思います。

この段階で「自分にはまだ理解できていない感覚や理論がある」というふうに考えると、心に余裕が出来ます。そうすると未熟な自分を許容して、課題に向き合うことができます。

しかしこの段階で『何年も頑張ってきたのだから出来て当たり前だ』と考えてしまうと、自分にプレッシャーを与えて過ぎてしまいます。この状態に陥るといわゆる「見えない壁」にぶち当たった状態になり、空回りに苦しむ事になります。指導者や先輩や親などの目には、頑なな態度をとっているように見えてしまうのもこの状態の悲しい所です。

2.知っている側からは当たり前のことのように思える

指導者、先輩などは今ご自分が直面している課題はすでにクリアしてきており、感覚や理論をすでに理解している状態にあります。こと体を使うものに関しては感覚を掴んでしまえばごく自然に当たり前のように出来てしまうことが多いです。それゆえ指導者や先輩からのアドバイスはまるで常識かのようなトーンで投げかけられてしまいます。しかし自分にとっては未だ未知の感覚や理論なので、とても大きな課題として感じます。ここで前述した「自分にはまだ知らない領域が当然ある」という心持ちでいないとパニックになってしまいます。

3.他人からは上達の過程のどのあたりにいるかは見えている。本人からは目の前の課題を乗り越えないと次の工程は見えない

自分が上達していく過程というものは思ったよりもイメージしづらいです。過程をイメージできるのはゴールを知っている人のみだからです。本人はまだその領域に到達していないわけですから、その道筋を具体的にイメージするのはかなり難しいです。おおよそ全て指導者や先駆者からの伝聞の形式で想像するしかありません。

その時に本人に精神的余裕が必要となります。パニックに陥ったら何を聞いても頭には入ってこないと思います。自分には見落としている要素があるはずだ、まだ習熟していない要素があるはずだと思っておくと、先達からのアドバイスは驚くほど親切に感じますし、納得感も出てきます。

逆に他人からは本人がどのレベルにいるかは分かり易いように思います。本人は目の前の課題を越えるために精神的余裕を持って、落ち着いてに取り組んでいる仮定して、周囲、特にその分野に未経験の人が第三者目線で見た時には酷な現象が起こります。「詳しいことは分からないが上手いのはわかる/下手なのはわかる」現象です。往々にしてこのジャッジは的確、もしくはそれに近い事が多いです。未経験の者にズバッと言われた時の精神的ダメージはかなり大きいです。才能を育むためにはストレスも必要なので、たまに言われて悔しい思いをするのは良いと思いますが、親などが口癖のようにこれをしてしまうと、小言のつもりでも、本人の心を折るくらいの攻撃力がある事は理解していただきたいです。

4.自分を観察し、仮説を立てながら実験する

ここまでは主に心の持ち方について書いてきましたが、ここからは具体的な方法論に移りたいと思います。
伝え聞くしかない未知の領域を攻略し上達していくには、自分を観察し、仮説を立てながら実験するのが良いと思います。自分の動き、身体をじっくり観察すると問題点や違和感を発見できます。この観察の時点で指導者のサポートが必要になることが多いのですが、本人に観察するつもりがないと難しいです。又、自分で発見することで理解度が深まるので、サポートする側はうまくヒントを与えられるようにしたいです。

その後、指導者、先輩から聞いたアドバイスの中から関連しそうな要素に取り組んでみます。この要素がこの問題点につながっているのではないかと仮説を立てていきます。目立った改善がなければ次の要素に取り組んでみることの繰り返しになります。そして自分ではあまり関係ないと思っていた要素が、実は一番関連が深いということが多々あります。パッと思いつく要素はすでに気をつけていることでもあるからです。


日々のレッスンには筋肉的な訓練と、反復による感覚の強化がありますが、ここに観察と仮説と実験を加えることで少しずつ上達していけるのではないかと考えています。

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